第64章 思惑
「えっっマジ?!?!エルヴィンが?!?!」
「あ、あの語弊だったかもしれませんが、もちろん大人なところはあって、そこもとても素敵なんですよ?」
「いやぁ~~~頭の良すぎる子供なおじさんはナナも手を焼くだろう。」
ハンジさんはケラケラと笑った。
エルヴィン団長と過ごしてきた日々を思い返すと、驚くほど自分が感じているものが違うことに気付いた。
「―――――不思議なんです。リヴァイさんの隣にいると、リヴァイさんしか見えなくなる………今まで見えていたものさえ、見えなくなって……すべてリヴァイさんに感覚が独占されてしまうんです。それがエルヴィン団長の隣にいると――――――、今まで見えなかったものが沢山見えて来て。それをひとつひとつ理解して、少しずつエルヴィン団長と同じものを見られるようになっていける気がして、とても―――――楽しいです。」
「………そっか。愛にもいろんな種類があるんだね。」
ハンジさんは、まるで一生懸命何かに足掻く子供を見守るような、何があっても包み込んでくれるつもりでいるような、そんな優しい目をしてくれた。
「はい。本当に、不思議です。」
「――――エルヴィンを宜しく、ナナ。私はいつでも、ナナの味方だよ。」
「―――――ありがとうございます……ハンジさん。」
ハンジさんに話すと、心が少し穏やかになった。
リヴァイさんとエルヴィン団長のことは、あの決断の誕生日からもう随分経つのに――――――本当にこれで良かったのかと、自分の心が弱る度に不安が再燃してくる。
でも、今日こうして口に出したことで頭の中を整理できた。エルヴィン団長と歩むと決めて、この翼を受け取ったんだから。調査兵団も、家のことも……これから乗り越えなきゃいけないものは沢山あるけれど……私はきっと超えて行ける。大丈夫、そう思えた。