第64章 思惑
「私がリヴァイさんの側にいると、その力を削いでしまう。だけど、エルヴィン団長とこの世界の真実を暴くことに関しては、側にいることで役に立てることがあるんです。」
「―――――こんな世界でなければ、ナナの選択は違ったのかな。」
「………どうでしょうか。でもこんな世界でなければ、私たちはみんな出会えなかったかもしれません。」
「そうだね、確かに。」
「私は酷い奴ですね。」
「――――……だね。でも多少の割り切れなさは各々抱えているとしても、3人が3人とも言わなくてもそれを理解していて、同じ判断をしているんだ。各々の個の最善よりも、人類の最善になるほうを選ぶ。それが――――――私たちは心臓を捧げた身なんだなって、つくづく身に染みるよ。」
「―――はい。」
「………いや?エルヴィンだけは………1人勝ちじゃないか……!」
ハンジさんはやられた!とばかりに自分の腿をぺちん!と叩いた。
「――――いえ、私の心の半分はリヴァイさんに置いて来てしまったこと、分かっていらっしゃると思います。だからきっと………エルヴィン団長も、苦しいのではないでしょうか……。」
「そっか。ざまぁみろだ。」
「意外と……ものすごく独占欲も支配欲も強い人なので……、おそらく結構苦しめてしまっている気はします。」
私は申し訳なさを含んではは、と笑った。
「えっそうなの?いつもあんなに涼しい顔してるのに?!」
「はい。団長の顔じゃない時は、すごく―――――欲望に正直で、頭の良すぎる大きな子供……みたいな……かんじです。」
私がなんと表現していいのか悩みつつも言葉を選ぶと、ハンジさんは目を丸くしたあと、腹を抱えて笑った。