第64章 思惑
軽蔑されるだろう。
でも、今までずっと支えて、いつだって私の事を考えて寄り添ってくれたハンジさんに嘘はつきたくなかった。
その正直な心情を、彼女にだけ……話した。
「―――――リヴァイさんのことは一生――――――吹っ切れることなんて、ないんです。」
「………そっか。」
「……初めて恋をして、初めて全て捧げて、初めて愛して―――――リヴァイさんがいれば、自分の夢も人生も―――――この世のすべてがどうでもよくなるほどの想いを、私はどうやっても消せそうにない……。」
「――――――でもナナのことだ。エルヴィンのこともちゃんと愛しているんだろう?」
侮蔑の眼差しが突き刺さることも覚悟していたのに―――――、ハンジさんは、ただただ優しい目をして私の頭をぽんぽんと撫でた。
「はい。―――――とても。」
「ナナがリヴァイと離れてから――――――リヴァイの行動はまさに兵士長に求められる要件を高い基準で全て満たすようになった。少し前まで、任務を放棄してナナのお母さんを単独行動で助けに行っちゃったり、後先を考えずに動いちゃってたけど―――――、例の書物の一件からこないだの壁外調査でも―――――驚いたよ。仲間と兵団そのものを最優先で考えて行動するようになったんだ。」
「…………。」
「兵団のために――――人類のために、この役割が一番いいとリヴァイ自身も思っているんだね、きっと。だからエルヴィンにナナを託して―――――、調査兵団ごと、エルヴィンとナナを守ろうとしている。―――――ナナも、それを感じていただろう?」
そう。わかってた。
リヴァイさんにとって“生きる意味”がいかに重要に位置づけされているかは、愛し合う中でひしひしと感じた。
彼の生きる意味―――――それは“守ること”だ。
神から与えられたとしか思えないほどのその力で、あの頃は私を。そしてイザベルさんやファーランさんを。そして兵団の仲間を。徐々に徐々に、彼の守るべきものが増えて来て――――――きっとこの先、人類の自由を掴み取るその時に、リヴァイさんの力は不可欠だ。