第6章 入団
「おい。」
「はい……っ、なんでしょう……?」
リヴァイ兵士長は私の方へ近づいて来る。そして私の持つ雑巾を取り上げた。
「びっちょびちょじゃねぇか………。お前これ本当に絞ったのか?」
「えっ……はい……絞ったつもりなのですが………。」
リヴァイ兵士長が、雑巾をバケツの上で絞る。まるで濯いですぐ絞ったかのように、水が滴り落ちた。
私は驚いてリヴァイ兵士長の目を見た。
「すごいです。」
「すごいです、じゃねぇよ。どんだけ力ねぇんだお前………。ガキの頃から、腕力成長してねぇんじゃねぇか。」
私は呆れられているんだ、とわかり肩を落とした。
「………腕のトレーニングだと思って、しっかり拭け。足手まといにならないよう頑張るんだろ。」
「………はいっ……!」
ほら、やはりあなたはいつだってこんなに優しい。
それからの時間は、特に大した会話もなく二人で黙々と掃除をした。その時間が、とても心地良いものだった。
夕方になり、ようやく掃除とリヴァイ兵士長の私物整理が終わった。額の汗を拭って、満足げな表情をしていると、ふわりと心地よい香りが鼻をかすめた。
「………ご苦労だった。ソファに座ってろ。」
「はい、失礼……します……。」
おずおずとソファに腰かける。すると、リヴァイ兵士長が私の目の前に湯気の立つカップを置いた。
「紅茶………!」
「………お前が持ってきてたものほど、良いもんじゃねぇがな。」
「いえ……嬉しいです!覚えていてくださったんですか?」
「………ああ。」