第63章 番 ※
今度からちゃんと言う通りにした方が身のためだ…と教訓を感じつつベッドに転がる。
結局足腰が立たなくなった私を、エルヴィンが入念に身体と髪を洗って、拭いて、ベッドに運んでくれた。
「寒くないか?」
そう言って私を腕の中に抱き締める。腕の中からエルヴィンを見上げて、その言葉を伝える。
「エルヴィン、――――――愛してる。」
エルヴィンはすごく驚いた顔をして、その意味を吟味するような表情を数秒見せたあと、ふっと笑って言った。
「――――嘘の練習はもういいよ?」
「――――愛してる。」
もう一度、その目の奥をまっすぐに見つめて、笑う。
この想いが、届けばいい。
「ああ……………ナナ………俺もだ…………。」
エルヴィンはどうしようもない、観念した、と言った表情で小さく愛の言葉を呟いて、私に口付けた。
「あなたに愛されて、私は幸せ。エルヴィンにも幸せを感じて貰えるように、頑張る。」
「――――頑張らなくていい。君が側にいて―――――同じ道を歩いてくれるだけで充分だ。」
エルヴィンが私の髪を撫でながら言う。
「ふふ、エルヴィンとなら地獄でも怖くないかもしれない。」
「それは良かった。外の世界までの道は、地獄さながらの道かもしれないぞ?」
「うん。私はまだ強くないから―――――心が折れることもあるかもしれない。だけど、必ずまた立ち上がるから。抗う事を止めないから。だから――――同じ夢を見させて。」
私の言葉を聞いたエルヴィンは身体を起こして、サイドボードに置いていた私物の中から、見覚えのある小箱を取り出した。