第63章 番 ※
「それは―――――……。」
「指輪じゃなく、これならもう一度、受け取ってくれるか?ベタな口説き文句だが―――――君なしの世界なんて、俺には考えられない。共に生きよう。ナナ。」
いつかの日に返した、翼のネックレス。
あなたが私を夢に向かって進むに必要な片翼だと認めてくれるのなら、受け取らない理由がない。
「はい。喜んで―――――。」
そう答えて微笑むと、エルヴィンもまた心底嬉しそうに、安堵したように微笑んだ。
「――――俺に、つけさせてくれ。」
髪をあげると、その腕が私の首に回されて、華奢なチェーンが鎖骨に触れる。しゃらん、と小さく可憐な音を立てて、私の首元に翼があしらわれた。
「――――計画通り?」
「うん?」
「こうなることを随分前から―――――企んでいたでしょう?」
「もちろんだ。なんせ恋敵が最強の男だからな。男から見ても惚れるような男だ。色々と苦労したよ。でもまだ―――――。」
「え?」
「―――――いや、なんでもない。さぁ、眠ろうか。明日も早い。」
「――――うん……おやすみ……エルヴィン。」
「おやすみ、ナナ。」
気だるさと甘い体温の中で微睡みながら―――――
私たちはひと時の幸せを噛みしめるように強く抱き合って眠りについた。