第63章 番 ※
宿の部屋に戻ると、ナナはバフッとベッドに倒れ込んだ。
「こらナナ、シャワーを浴びておいで。そのまま寝るんじゃない。」
「やだ………。」
「―――――言うことを聞きなさい、ナナ。」
「……………。」
俺の言葉に反応しない。
寝たのか、とため息をついてその顔を覗き込むと、悪戯ににんまりと細められた目が俺を映した。
「――――起きてるじゃないか。」
「ううん、寝てる……。」
「ふふ……まるで子供だな。駄目だナナ。ほら、せめて着替えるんだ。」
着替えさせるという口実を得て、横たわったままのナナのシャツのボタンを一つずつ外す。
徐々に暴かれる白い肌に反比例して、これまで優勢だった理性が少しずつ削がれていく。ナナの意志を確かめるように、その滑らかな腹部にそっと指を這わせた。
「――――っ……ん………。」
ぴくん、と小さく身体を捩ったナナは受け入れる気だと確信して、思わず口の端が小さく引き上がってしまう。
その小さく開かれた唇が愛しくて、たまらず唇を重ねる。
「―――――舌を出して。」
低く囁くとナナは応じて小さく開いた唇から、柔らかな舌を遠慮がちに差し出した。その舌を絡めとって、ぴちゃぴちゃと音を立てて唾液を交換する。
「ん、ふ………っ………。」
唇を離すと繋がる糸を舐めとって、早い呼吸を繰り返しながら潤んだ瞳で俺を見上げるナナに、劣情が抑えられない。
「ナナ………、俺はいつでも―――――何度だって君を抱きたいんだ。だから……そんな顔をされたら、我慢ができない……。」
首筋に食らいつき、その肌を吸って印を刻む。
誰にも触れさせない。
誰かにナナが抱かれるなんて想像するだけで気が狂いそうだ。
ナナが攫われたあの時――――――、もし中央憲兵に凌辱でもされていたなら、まして殺されていたとしたら。
俺はどんな手を使ってでも中央憲兵を潰しただろう。
それくらいの秘めた狂気を持ち合わせていることを、生まれて初めて自覚した。