第63章 番 ※
「ふふ、嬉しそうだ。バーが初めてなのか?」
「バーは行ったことがないです……!夜に外食に行くことも――――――ほとんど経験がありません。父の御用達のレストランくらいしか……。」
「悪いがナナ、君の父上が御用達にしていたようなところではないよ。」
「はい、いつもエルヴィン団長がリヴァイ兵士長やハンジさん、ミケさんと行かれるようなところに行ってみたいです……!バーにも、行きたい……!お酒は色々あるのですか?どうしよう、色々飲みたいけれど、酔っぱらってしまったら迷惑になりますよね……。」
あまりに喜々として次から次へと言葉を紡ぐナナは、まるで子供だ。
「落ち着けナナ、時間はあるからどちらも連れて行こう。それから、興奮のあまり団長呼びと敬語が出ているぞ。」
「………あ。」
俺が指摘するとしまった、という顔をする。俺が心の距離を近づけたくて、呼び捨てでいいと、敬語でなくていいと言ったから律儀に慣れない口調で無理していたんだろう。
「――――いいよ、無理をさせてたんだろう。君が呼びたいように、話したいように話せばいい。」
ナナは少し考えて、大きな瞳に俺を映して言った。
「………エルヴィンと呼びたい。」
「そうか、嬉しい。」
「敬語も、使わないことに慣れていきたい。」
それは意外な返答だった。
「まだ、時々うまく使えていないけど―――――……、対等だと言ってくれるなら、対等でいたい。ただの男と女、でしょ?」
「ああそうだ。嬉しいよ。――――まぁベッドの上で乱れているときは、上手に敬語も飛んでいるぞ?すぐ慣れるさ。ナナは素質があるからな、色々とね。」
「!!!」
ナナは顔を真っ赤にして、可愛らしく俺を睨む。
「―――――大人の夜遊びを教えてあげよう。おいで、ナナ。」
手を差し伸べると、輝かした瞳に俺を映して笑う。
あぁ、たまらないな。この笑顔を手放したくない。
「うん!!」