第63章 番 ※
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会議を終えて宿に戻り、当たり前のように一部屋の鍵だけを受け取って部屋に入ろうとすると、ナナが俺の服の裾を引っ張った。
「…………あの。私の……部屋…は……?」
「君が前に言ったんだぞ?同じ部屋がいいと。」
「―――同じ部屋がいいとは言ってません、そうするつもりでしょうと言っただけで……。」
「別々にしたところで、君は俺の部屋でワインを嗜んで―――――そのまま一緒に眠るんだから一緒でいいだろう?」
なにか言い返してやろうとでも言うようにあれこれ考えている様子だったが、ワインの誘惑に負けたのか、ほんの少し頬を染めて上目遣いで俺を見た。
「…………ワインは甘いのが、いいです……。」
「了解だ。」
部屋に荷物を置いて私服に着替えた後、ワインを調達に出かけようと思ったが―――――あんなことがあった後で、この王都でナナを1人にすることが怖かった。
「―――――そうだナナ、今日は部屋で飲むのではなくて―――――どこか食事に行くか?」
「え………。」
「食事をしてから、バーに行ってもいい。君がもっと好きになる酒が見つかるかもしれない。」
「い、行きたいです……っ!」
ナナは目を輝かして俺を見上げた。
ナナは外で酒を飲むのが初めてなのだろう。未知のものと出会ってワクワクしている時にこの顔をする。王都から取り寄せた菓子を贈ったときのそれと同じだ。
何て可愛いのだろう。つくづく、自分の理性がちゃんと仕事をしてくれていて良かったと思う。