第63章 番 ※
「――――らしくない結果じゃないか。なにかあったのか?」
ザックレー総統が少し俯いて眼鏡をずらし、見上げるようにエルヴィン団長に目線をやった。
翌月の王都招集で、今回の壁外調査において目的を達せなかったことを咎められる。
私はやるせなさと憤りをなんとか堪えていた。そうなったのは――――――調査兵団のみんなが死に、傷ついたのは―――――それを望んだ人間がいるからじゃないか。マシューさんだってきっと、あんなことをしたかったわけじゃなかったはずだ。
何て混沌として薄汚れた場所に私たちは立たされているのか。
「―――――なにか厄介なことが、起きておったようじゃが?」
ピクシス司令が口を開いた。
「―――――そうなのか?エルヴィン。」
「―――――はい。」
「そう言えば憲兵団から派遣していた兵も、死んだとか。詳しく話せ。」
エルヴィン団長は表情を一切崩さず、事実を述べた。
「アレットがそんな凶行を?………まさか………。」
口を開いたのは、ナイル師団長だった。そうか、マシューさんの本名は、アレットさんというのか。
「彼を、アレットを凶行に走らせたのと、うちの補佐官を誘拐・監禁したのは同組織です。」
場内がざわついた。
「―――――中央憲兵。補佐官のナナは中央憲兵のアーチという新兵を認識している。」
「―――――穏やかじゃないな。」
ザックレー総統がふうっと息を吐いた。