第63章 番 ※
「――――団長失格だな。」
「え?」
「執務が残っていたにも関わらず君を抱いて、まさかそのまま眠って朝になるとは………。」
「団長らしからぬ行動は今に始まったことじゃないでしょう?」
小鳥が囀り、柔らかな陽光が射し始める早朝。
エルヴィンの私室のベッドでその体温を感じながら目を覚ました。
「さぁ、そうだったか?」
「そうでしょ。すぐ抱きしめるし、隙があればキスするし、すぐ色気を出してくる……。」
「色気を出してるつもりはないが。」
「じゃあ漏れてるんですかね?」
「なんだか嫌だなその表現は。」
「――――とにかく、団長失格は前からですので気にしないほうがいいかと。」
「辛辣だな。情事の後は普通甘いやりとりをするものだぞ?」
「エルヴィンはすぐ“普通は”とか“女性は”と言うけど……私はそれがイヤ……比べないでほしい。」
不満を呈してその顔を見上げると、エルヴィンはふっと笑って私の頬を柔くつねった。
「――――そうか。気をつけよう。あと――――――」
「??」
「抑えられずみっともなく、無茶をした。身体は大丈夫か……?」
「大丈夫です。そんな簡単に壊れないって、言ったでしょう?」
「――――……すまない。」
「――――……昨日から、謝ってばっかり。」
弱気なエルヴィンが愛おしくて、私は微笑んで彼をぎゅっと抱きしめた。
少しだけ彼の弱さも、かっこ悪いところも、知れたから。
エルヴィンからの気持ちを受け取ってから、時間をかけて少しずつ団長以外の顔の彼を知って、そこにまた惹かれていっている。
そしてこの身に余るほどの熱量で愛してくれていることも感じている。
―――――あぁ、きっともうすぐ、心から言える気がする。
愛していると。