第62章 帰還
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幹部とサッシュさんが部屋を去った。
その背中を見送って、団長室の扉を閉めた途端、後ろから大きな身体に覆われるように抱き締められ、強く身体を締めつけられた。
「―――――エルヴィン、団長……?」
「―――――すまなかった。守ってやれなくて―――――……怖い思いをさせた。」
「―――――………。」
「―――――……すまない……。」
エルヴィン団長の手に、手を重ねる。彼の手は、震えていた。
「―――――エルヴィン団長のほうが、震えてます。」
「―――――ああ、怖かった。」
「大丈夫。なんともないですよ。ほら、元気です。」
私は笑顔を作って、振り向いて見せる。そこには、悲しく、辛そうで悔しそうなエルヴィン団長の表情があった。
「一緒に歩いていくのに、守ってもらうしか能がないのは嫌です。だから、謝らないでください。自分の身は――――自分で、守らなきゃ。私が不用心だったのがいけないんです。」
「………………。」
「それにね、私上手に嘘がつけたんです。エルヴィン団長にも見せてあげたかったな、私ね、悪い女のふりをして――――――――」
「―――――ナナ。」
「………はい?」
「いい、強がらなくて。」
「…………。」
「だって今は―――――団長と兵士、だから………。」
私がそう言うと、エルヴィン団長は自由の翼を脱ぎ捨てて、ループタイを取り払い、髪を乱した。そして私の自由の翼も脱がして、髪を解いた。
「―――――ただのナナは、どうして欲しい?君の望むようにしよう。」
「―――――強く、抱き締めて………。」
私のせいで、少なからず混乱をきたした。
エルヴィン団長の横に並びたいのに、足を引っ張る。そんな自分が嫌で、でも泣きたくなくて、そのどうしようもない感情を持て余す。
エルヴィンは私の言う通りに向かい合って強く強く私を抱き締めて、耳元で囁く。その匂いも、低い声も、逞しい腕も、彼の存在を感じることで気持ちが落ち着いていく。