第62章 帰還
「――――誰かを失うことに恐怖を覚えたのは、初めてだった―――――……。」
「――――……でも、壁外調査をちゃんと遂行してくれた……。」
「――――リヴァイに叱られながらね。」
エルヴィンは自虐的に笑った。
「――――私が犯されても殺されても、立ち止まらないで。捨てて行っていい。ワーナーさんとお父様に報いるために、この世界の真実を暴くために―――――……進み続けて………。」
「―――――難しいことを言うな……。」
「私も強くなるから……。」
「………期待してるよ。」
エルヴィンの悲し気な笑顔に、心が痛む。私たちの道は、険しいんだ。これからもこんなことは起こるんだろう。
人を欺き、欺かれ、命を奪い合うことだってあるに違いない。でもその道を共に歩むと決めたから。
この人となら、残酷で険しい道でも歩いて行けると思うから。
「――――エルヴィン。」
「ん?」
「―――――抱いて欲しい……。」
「――――……同情か?気遣いか?――――なら、やめてくれ。余計に苦しい。」
エルヴィンは困ったように眉を下げて首を横に振った。
「違う。ただ欲情してるの。」
悪い女の真似事をして、エルヴィンの唇を小さく舐めてみせる。
「思い知りたい、エルヴィンの元に帰ってきたって。」
首を引き寄せて、唇を重ねる。エルヴィンの切羽詰まったような声に、また興奮する。
「―――――君は本当に………っ………、俺を、どうする気だ………!」
ガタン、と大きな音を立てて団長室の扉に押し付けられ、息を継ぐ暇もないほどに舌を絡める。
いつもと違って愛撫も挿入も抽送も全く優しくなくて、エルヴィンが余裕なく激しく求めてくれることが、嬉しかった。
何度も何度も交わって白濁の欲望を受け止め、その高い体温に私は溶かされていった―――――――