第62章 帰還

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「――――リヴァイ兵長、なんで……ナナは攫われたんですか……？」



リンファが小さく口を開いた。



「………サッシュ、てめぇ何か知ってるよな？」

「―――………実は………。」



サッシュは中央憲兵に弟が入団し、白髪の髪の少女を探す任務に就いていることを白状した。そして―――――ナナを疑っていることも。



「………まぁ、攫ったのがアーチなら……酷いことは、しないと思うけど……。」

「―――――いや、新兵一人に任せるわけがねぇ。残忍で頭のキレる奴がついてる。――――それが今回の壁外調査で凶行に及んだマシューも操った。恐らくな。」

「そんな……っ……！」



サッシュがガクガクと震え出した。

ナナを、自分の過失で失うかもしれない恐怖と罪悪感に押し潰されそうになっている。リンファは頭の中で最悪の想像をしたのだろう、それを頭を横に振って振り払うようにして、感情的にサッシュの胸ぐらを掴んだ。



「……っ、なんで言わないんだよ！！！団長にも……！私にも……っ！！言ってくれたら……ナナのこと、守ってやれたかもしれないだろ！！」

「言おうと思った……っ……！だけど……っ……！」

「―――――やめろリンファ。こんなところで揉めてる間にナナに危害が及んだらどうする。探すぞ。」

「……はい……。」

「駐屯兵団がウォール・ローゼ内に続く門は検問をしたが、それらしき奴らは通行していないと言っていた。トロスト区内にいることに間違いは無さそうだ。」

「はい……！」

「おそらく、廃墟か地下室がある建物だ。」

「――――……なぜ、ですか……？」



リンファが不安そうに尋ねる。



「―――――拷問に適している。」

「――――――………。」



リンファとサッシュは真っ青な顔をして俯いた。

俺だってそんな想像はしたくない。だが、相手が相手だ。それに――――――嫌な感じがしている。

ナナが夜会で会ったという男――――――あの日から、ナナに纏わりつく影が濃くなっているような気がしていた。

残忍でキレる男――――――まさかな………。



「日が暮れたら、ここに戻れ。いいな？」

「はい……。」



俺たちは散り散りにその場を後にした。