第62章 帰還
「わかってください、私たちは――――――、王を脅かしたり、命を無駄にしようとしてるんじゃない……!人類がこれ以上巨人の脅威に晒されない未来のために――――――!」
「黙れよ!!!」
アーチさんは怒りを露わに立ち上がった。
ひどく興奮した様子で、私の顔を乱暴に掴んだ。
「…………!」
「―――――やはりあんたは危険だ。なにかを企てる可能性を否定できない。」
「……可能性がある人間を片っ端から殺すんですか?それがあなた方のやり方ですか。」
「うるさい………!」
彼の心に葛藤が見える。元々とても優しく純粋なのだろう。中央憲兵の存在意義を信じようとしても、相反して疑心が募っているのか。
「――――おかしいと、思い始めているんでしょう?!自分を欺いて中央憲兵団にいる必要はない……!リンファを守りたいなら――――――側にいるべきじゃないんですか……!」
「―――――側にいたって、リンファは俺を見ない。」
「―――――………。」
今までの彼とまるで違う、幼い嫉妬をそのまま表情に映していた。サッシュさんに焦がれて追いかけるリンファを、ずっと見ていたのか……ずっと、好きだったんだ。
「―――――……喋り過ぎた。悪いが―――――もう一度眠ってもらう。」
「――――っ………。」
脳への鈍い衝撃と共に、強制的にその目は閉じられた。