第62章 帰還
「―――――たかが数年一緒にいただけのあんたに、何が分かる……!」
「………なにが、ってどういう意味ですか?」
「リンファがどれほどの傷を負ってるかも、知らないで………!」
「…………。」
アーチさんは感情的に、自身の腿に拳を強打して俯いたまま言った。
「俺がガキじゃなかったら―――――俺が強ければ、守ってやれたのに………!」
―――――リンファの過去を、知っているんだ。だから女性に乱暴しようとするのが許せなかった。間接的にまた、私はリンファに助けられたことになる。
「………今度こそ俺が守る。調査兵団にいればいずれ死ぬことは目に見えている。調査兵団の力を――――――あの切れ者の団長の力を削ぐ。それこそが王の意向でもあり、俺がリンファを守る術だ。兄貴には任せられない。だから俺がやる。」
「――――それが中央憲兵団に入った理由ですか………。」
「―――――そうです。」
「では、私たちは敵ですね。」
「!!」
「私の大事な仲間が命を懸けている壁外で、あなた達は―――――何を、したの………?」
「…………。」
「―――――仲間の命を奪ったとしたら、私は赦さない……!たとえサッシュさんの弟でも……!」
怒りを込めてアーチさんに視線を突き刺すと、少しの動揺が見えた。どう強がったって15歳の少年だ。
その心は、脆い。
「何も、してない………俺は………。ただ、隊長が何かを……企ててた……。」
「――――アーチさんは王のため、リンファのためと言って―――――いずれ人を殺すの?」
「っ………!違う、俺は――――――!」
「違わない。中央憲兵が今までしてきたことはそういう類のことだって知ってるはず。なら、そこまで覚悟しているんでしょう?」
「―――――…………。」