第62章 帰還
「地下街………?そんな危ないところに行かせてなどもらえませんでした。私はオーウェンズ家の跡継ぎとして、厳しく行動を制限されていたので……。」
「――――わかりました。幼い頃は無かった、それでいい。だが―――――数か月前地下街に行きましたよね?」
「…………。」
「――――リヴァイ兵士長らしき人物と。何のために?」
どうしよう、そこまで掴まれていたのか。
でも、決して顔には出さない。下手をすればリヴァイ兵士長まで巻き添えにしてしまう。
どうやってこの場を切り抜けるのが最善か、考えろ。
彼は女性に免疫がない。
さっき私の肌を見た時の反応でそう思った。
なら――――――彼が一番理解しがたいものになればいい。
「――――愛する人の生家と、育った場所を見たかった。ただ、それだけです。」
「おかしいじゃないですか。あなたは団長の女なんでしょう?」
「―――――ふふ………。」
私は悪い笑みを浮かべて、アーチさんを見上げて言った。
「―――――……団長には………内緒。」
「………っ……!」
「―――――私の愛はね、いっぱいあるんです。」
アーチさんは顔を赤くして、でも嫌悪の表情で後ずさった。
「―――――っ……、ふしだらな女だな……っ……!もう、いい!!調査兵団が戻るまで、じっとしてろ!」
そのまま少し離れた椅子にドカッと座った。なんとかやり過ごせたのだろうか……。
上手に嘘をつくには、時折真実を混ぜ込むといいとエルヴィン団長から聞いたことがある。
私が織り交ぜた真実は、やはり理解されるどころか嫌悪されるらしい。