第61章 謬
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索敵4班の方へ駆けて行くと、そこにいたのは一騎だけ………マシューだけだった。
なんだこれは、おい、どういう状況だ?なんで索敵の一端が、なんの報告も信煙弾も放たずに壊滅状態になってる。
―――――俺は片手の剣を抜いた。
「………!リヴァイ兵長………っ………!」
マシューが青い顔をして近づいて来た。
「……おい、他の奴らはどうした。」
「それが………っ………、巨人に急襲、されて……っ……みんな………やられました……。残ったのは、俺だけ、です……。」
「――――――………。」
索敵4班にいた面々の顔が過る。
「――――それはおかしな話だ。いくら急襲されても、あいつらが何も発せずに死ぬわけがない。もし何も発せずに死んだとしたら――――――相手は巨人じゃねぇ。」
マシューの目が、昏く淀んだ瞬間。
ガキィンッ………
斬撃を剣で弾いた鋭い金属音が響いた。仕掛けて、来やがった。
「――――てめぇ、憲兵からのただの密偵じゃ、ねぇのかよ………っ………!」
「うるさい………っ………!あんたにも、ここで死んでもらう………!」
「―――――クソが………!」
あんたにも、と言った。お前が殺したんだな。
巨人と戦う覚悟で心臓を捧げようとした俺達の仲間を、あっけなくその刃で。
あいつらが最期に見たのは、自由の翼を背負ったこいつの姿。自分が死ぬ理由すら見つけられず、巨人に挑むことすらなく、死んだのか。
「―――――殺す。」
俺の目に怯んだ様子を見せたその一瞬。最速のスピードで奴の首に切りこんだ。動脈が破れ、噴水のように鮮血が散る。
首と共にブツ、とか弱い金属を絶った感触がした。血を浴びた小さなペンダントのようなものが、宙を舞って地面に落ちた。
「―――――嫌、だ……息子のところに……帰る……、リエト……………。」
気道から空気が漏れる音に混ざって、奴は何かを呟いた。その身体はゆっくりと倒れ込み、ペンダントに重なるように地面に伏した。
「――――……ちっ………。」
地上に出て初めて、人間を殺した。こうも嫌な感触だったか。
動脈を裂く感触を振り払うように剣から血を飛ばして片付け、本隊に戻った。