第61章 謬
「――――待ってろ、すぐ行く……!」
伏せた奇行種の項をなんなく削ぎ落とし、あいつらの方へ向かったが――――――その手に掴まれていたのは、エッカルトだ。
「!!!いやだ、やめろっ!!うわぁあああっっ――――――!!!」
「エッカルト―――――――!!」
距離を詰めるにつれ聞こえる、エッカルトの骨を砕く残忍な音。
奴の手からは蒸発しない血が、吹き出した。
その様子を、目撃したイルゼとケイジは顔面蒼白で、もはや足の一つも動かせそうにない。
「イルゼ!ケイジ!!!!動け!!!!エッカルトの命を無駄にするな……っ……!」
届くか。
あと少し、エッカルトを食い終わる前に俺が削ぐ。
ガスを目一杯ふかして近づこうとした瞬間、通常種の頭上に緑のマントが舞った。
あぁ、来てくれた。
「―――――リヴァイ兵長……っ……!」
当たり前のように通常種を瞬殺して、息も乱さず俺達に近づいてきた。
「――――サッシュ、何事だ。なぜ伝達班が戦闘に当たってる。索敵に何かあったのか。」
「詳細はわかりませんが……索敵4班が機能していないのは確かです……!急襲を受け、戦闘せざるを得ませんでした……!」
「そうか。」
気付けば俺は、ガクガクと震えていた。
―――――エッカルトを死なせた。その事実が息を遮る。
リヴァイ兵長は俺を鋭い目で一瞥すると、柄にもなく俺の頭をくしゃ、と撫でた。
「―――――お前の判断は間違っていない。――――エッカルトを弔うためにも、生きて帰るぞ。」
涙が出た。敵うわけない、こんな格好いい男に。
「――――はい………っ……!」
「ケイジ、イルゼ。ビビッていても無理矢理身体を動かせ。死にたくなければな。」
「は、はい………。」
「俺は索敵4班の様子を見に行く。このまま本隊へ合流しろ。」
「はい。」
そう言ってリヴァイ兵長は、単騎で右翼のほうへ駆けて行った。