第61章 謬
索敵4班が無信号で機能をしなくなっていたことにより、数体の巨人を陣形内に侵入を許す結果となった。
兵たちの動揺は大きく、動きの統率がまるで取れていない。
ハンジとミケを集めて、緊急でこの後の進路と作戦続行可否について話し合う。
「―――――なかなかの打撃だぞ。このままシガンシナ区まで行くのか?」
「――――俺は反対だ。兵たちの不安の匂いが渦巻いている。無理矢理続行すれば、更なる被害に繋がる。」
「……そうだね、悔しいけど……私も同感だ。」
「―――――皆の言う通り、無理はしないのが賢明だな。作戦は中止、日が沈み次第野営体制で小休止、日が変わる時間には引き返す。元々シガンシナ区の調査よりも長距離索敵陣形の試行を主にしていた。その欠点が良く分かったからな。収穫としては十分だ。 マシューのことは……話すべきか………。」
「―――――同じような密偵がいないとも限らねぇ。班長以上にのみ知らせるのが妥当じゃねぇか。全員に知らせると、不安に飲み込まれて動けなくなる。」
「―――――そうだな。そうしよう。」
日が沈み、野営準備を始める頃には兵のほとんどに覇気がなかった。
今回の調査は、出立前から色々と起こりすぎた。仕えているはずの相手から、その成功を望まれていなかったということだ。
いかに俺達がクソみてぇな籠の中にいるのかということを思い知った。
偽りの自由の先の本当の自由。
エルヴィンの元で戦うと決めたとき、その偽りの自由の正体はぼんやりとしていたが、今ようやくエルヴィンの横に並んで鮮明に見えてきた。
到底簡単に手に入るもんじゃねぇが―――――エルヴィンはそういうものにほど滾る奴だ。本当の自由を手にするまで、死ぬまで抗う。
俺はそこに命を懸けて沿う。
―――――――なぁナナ。
エルヴィンに対する俺のこのクソみてぇだが悪くねぇ感情は、なんて名前をつけたらいいんだろうな。―――――お前は笑うかもしれねぇが、いつも俺に新しい感情をくれるお前に聞いてみたい。
だからどうか―――――――無事でいてくれ。