第61章 謬
「サラ!!団長へ伝えろ!!右翼索敵の4班が機能していない!!俺達はあいつを迎え撃つ……!ここから先に行かして、たまるかよ……!ケイジ!エッカルト!イルゼ!戦闘準備!!」
「はっ、はい……!」
俺の指示でサラはすぐに中央本隊に向かって駆けた。
「ひっ………伝達班は戦闘なんてあまりないって……っ!」
「あぁ、だが仕方ねぇだろ……!黙って食われてぇのか?!やれ!!」
「は、はいぃ……っ…!」
青い顔をして新兵のエッカルトは震えながらも戦闘態勢をとった。
ケイジとイルゼはさすがに壁外調査を経験しているだけある。不安さは見せたものの、冷静に迎え撃つ気だ。
少しでも本隊から遠いところで戦闘に当たるべく、奇行種の方へ向かって駆け出した。
「――――っ……動きが早ぇな………!」
もともと伝達班は戦闘に不慣れな奴を置いている。
エッカルトとサラとケイジは新兵、イルゼは2年目だ。このメンツで奇行種含め2体は無理だ。
誰か―――――死ぬ。
「通常種の方がのろまだ!3人がかりで仕留めろ!奇行種は俺がやる!」
奇行種と相対する。
相変わらず気持ち悪ぃ面してやがる。奴が俺を掴もうと手を伸ばしたその手の先――――肩にアンカーを刺す。その腕をかけ上がって、項に回り込む。が、ぎゅる、っとその気持ち悪ぃ顔が俺のほうへ向いた。
「!!くそっ……!」
一度アンカーを外してガスをふかし距離をとる。食いつかれるか――――――掴まれたら終わりだ。
その時、奇行種の目線が別の方へ向いた。
やべぇ、あいつらのところに行かれたら―――――全滅する……!
「――――行かすかよ!!」
奴の視界の外からアンカーを射出し、その背中に近づく。長くワイヤーを伸ばしたまま、足膝裏の筋を削いだ。奇行種はがく、と体勢を崩してその場に伏せた。まずは動けねぇようにしねぇと、あいつらを守れねぇ。
ちら、と目をやると、3人は苦戦しているようだ。
通常種は8mといったところか。
手を使って人間を捕らえようと、ぶんぶんと振り回しているから項に近づけねえのか。