第61章 謬
――――――――――――――――――
――――――俺のせいだ。俺がもっと早く誰かに―――――団長に相談していたら。
ナナを連れ去ったのはきっと、中央憲兵だ。
アーチのことも、ナナのことも救えると僅かでも思った自分を呪った。
結局俺は、何もできない。
「――――班長、サッシュ班長!!」
「……あ、あぁ、なんだ?」
「ぼーっとしないでくださいよ……あんたに命預けてんですからね、こっちは!」
「悪い……。」
新兵にも関わらず班長の俺を叱責するのは、新規入団したケイジだ。普段の俺ならイラッとしたのかもしれないが、今は壁外調査に意識を引き戻してくれたことに感謝した。
もうどうにもならない。
駐屯兵団がナナを見つけてくれることを信じて―――――俺には俺のできることをやる。
そして帰ったら―――――ナナに謝るんだ。
そしたらまた、ナナはいつものように眉を下げて笑って―――――その側にきっとリンファもいて、仕方ない奴だなって、言ってくれる。
意識を集中して、周りに目を凝らす。
俺の班は伝達班だ。ひとつ前にリンファが率いる伝達班がいる。
微妙に視界に入るか入らないかのところに、右翼の索敵が並ぶ。その時、微かに感じる地響きと足音を感じた。右からだ。
右翼前方の索敵班の方へ目を向けるが、一向に信煙弾が上がらない。
「――――おい、なんか……おかしくねぇか……。」
「え………?」
ケイジが俺に釣られて右翼の方に目を向ける。
その時に目に入ったのは、10m級の―――――おそらく奇行種。4足歩行で動きが早い。その後ろに通常種も続いている。
「なんで信煙弾がねぇんだよ?!索敵の4班が壊滅したのか?!聞いてねぇぞ!」
そう呟いた瞬間、右翼索敵の前後の班が気付いたのか、信煙弾を放った。黒と赤。
――――――が、もう遅い。奇行種はすぐそこまで来ていた。