第61章 謬
「―――――あぁ、わかってるが………気にならないか。」
「あ?」
「ナナ一人を攫って何になる………?外の世界の事を尋問しても、証拠が出なければそれで終わりだ。大した効果を齎さない。」
「――――まぁ、お前を動揺させる目的なら成功してんじゃねぇか。」
「は、まぁな。だが―――――……もっと他にあるはずだ。考えろ………俺が敵なら、どうする。何を仕掛ける………?」
「中央憲兵の目的は最悪お前を殺すこと、次に悪けりゃお前を団長から引きずり下ろすことだろうな。」
「―――――だろうな。ふふ、面白いじゃないか。」
歓迎しない想像ばかりが次々に沸いて来る。
だが、それもまた乗り越えるべき壁のひとつに過ぎない。
連中の思い通りに動いていてはなにも成せないままだ。
「なぁリヴァイ。出立前に様子がおかしい兵士が、いなかったか。」
「―――――あの馬鹿…サッシュと――――――、マシューだな。ひどく、怯えていた。……まぁ憲兵団にいた奴にとっては初めて巨人と相対するわけだからな。無理もねぇが。」
「―――――お前の目は信用している。…………マシューは右翼前方の索敵だ。そこから煙弾が上がったら――――――お前に偵察を頼みたい。」
「――――了解だ。どういう見立てだ。」
「――――ナナを攫ったのがフェイクだとしたら、こっちが本命だ。なにか―――――起こる。」