第61章 謬
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門から駆け出してしばらく走ってから、長距離索敵陣形の展開を指示する。多方向に別れて、班が駆けていく。
このままなるべく巨人との戦闘を避けて――――――日没までにシガンシナ区に続く壁門まで辿り着くことが目標だ。夜間の内にシガンシナ区を調査し、その現状を報告する。
来たる奪還の日までに、あらゆる情報を得ておきたかった。
私の胸中は後悔で満ちていた。
―――――しくじった。
ナナを狙っていることをあえてこちらに把握させたのは、やはりわざとだった。
ナナの側に常に誰かを置いていたが、そこだけは唯一―――――無条件で大丈夫だと、思い込んだ。
“壁外調査に出ている間”
それだけは、誰かを置かずとも自ずと兵士の中にナナはいる。だから何も起こるはずがないと、無意識に決めつけた。
兵士に紛れて攫うなら、兵舎にいるときよりも混沌として準備に忙しく、それぞれがお互いの顔をつぶさに見ていない壁外調査の出立前が最も簡単だ。
―――――そんな下らないことに、気付きもしなかったなんて。
情報を流したのはおそらく、警戒を別のところに集め、壁外調査を警戒の穴にするためだ。
「―――――くそ………っ………!」
「―――――おいエルヴィン、落ち着け。お前が判断を間違うと170人全員死ぬ可能性だってある。ナナのことは今、忘れろ。」
並走するリヴァイがぼそりと呟いた。