第61章 謬
「新兵のくせに口答えかぁ?アーチ。随分だな。てめぇがのろまだから、入れ知恵してやったんじゃねぇか。有り難がれよ。」
彼はサッシュさんの――――――弟。
「――――っ……俺一人でも、できましたよ……!」
「――――てめぇはやっぱりガキだ、詰めが甘え。目的を確実に達成するにはなぁ、罠は一個じゃ足りねぇんだよ。」
「……どういう意味ですか………?」
「念には念をってな。」
「―――――………。」
2人の間に不穏な空気が流れる。
「――――まぁ果報は寝て待てというからな。とりあえずはこの壁外調査で―――――調査兵団がどうなるのか、待つとしようか。」
「…………!」
なんとか心を奮い立たせて、その男に怒りの視線を向けると、私の視線に気付き、にたりと笑う。
「なんだよ、随分情熱的じゃねぇか。―――――誘ってんのか?」
「―――――。」
「――――あぁそうだな、更に念を入れておくのも悪くねぇ。お前、団長の女だろ?」
「………!」
「随分入れ込んでる様子だったじゃねぇか。こういう場合は殺すより―――――もっと効果的にダメージを与える方法がある。」
そう言って私のシャツに手をかけ、すごい力で左右に引きちぎった。はじけ飛んだボタンと、急に空気に晒された肌がピリ、とひきつることが恐怖を煽る。
「んっ………!!」
男は至近距離で私の目を覗き込んで、狂気に満ちた選択を強いる。
「――――どっちがいい??判別できなくなるほど顔面をぐちゃぐちゃにされるか――――――、犯されまくって人格が崩壊するか。選べよ。好きなほうにしてやる。」
「…………っ………!」
身体の震えが止まらなかった。