第61章 謬
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壁外調査当日早朝―――――――
私が団長に就任してから、ウォール・マリア奪還計画を除いて一番の規模の壁外調査だ。
総勢170名。
20以上の索敵班と、10以上の班で構成された中央本隊。
兼ねてから考案していた、長距離型索敵陣形の本領が発揮される作戦だ。いかに巨人と遭遇せずに目的地まで進み、任務を果たして帰還するか。
まだこの陣形を使った調査は数少なく、今回が最も大きな規模でこの陣形の良し悪しを判断できるだろう。
現在の調査兵団の力を測る目的もあり、目ぼしい兵はほぼ出陣する。幹部はもちろん、隊長や班長クラスの面々も全て。
気分が高揚する。
この調査を―――――自由を奪取し、この世界の真実を暴く足掛かりにしてやる。
トロスト区の壁門前で、その轟音と共に門が開くその時までに、最終の確認をする。
隊編成や物資、作戦の概要や隊の動かしかたを入念に幹部・隊長の面々とすり合わせていると、なにやら青い顔をして、エミリーが駆けて来た。
「エルヴィン団長っ………!」
「――――なんだ、今は忙しい。急用か?」
「はい……っ……あの―――――――…」
かたかたとその手が小さく震えていて、嫌な予感がした。
「――――――ナナさんが、いません………っ………!」