第60章 慕情 ※
「………兵士長に言いつけますよ、この人全然反省してませんって。」
「ザックレー総統の次は兵士長か。まったく怖い女だな君は。」
エルヴィン団長ははは、と笑って片手でコーヒーを口に運びつつ、ごく自然に私の腰に手を添えて自分の方へと引き寄せる。
「なぁナナ。残りのこれだけの仕事を、日が変わるまでに必ず終えるから。そしたら―――――癒してくれるか?」
その手を伸ばし、高く結っていた髪を解かれた。
はらりと落ちた長い髪を指に絡めて遊ばせながら、甘えるようにその髪に唇を寄せる。
「………私に、拒否権はあるんですか……。」
「―――――Yesしか許さない。」
その目に、ゾクリとする。
否応なしに全てを思い通りに運ぶその力に、どうやったって飲み込まれてしまう。
「―――――ん、ぅ…………っ………!」
気が付けば大きな手で後頭部を引き寄せられてその唇を塞がれ、苦いコーヒーの味を舌に刷り込まれていた。
「―――――……ほら、返事は………?」
「………………Ye…s………」
「―――――――いい子だ。」