第60章 慕情 ※
「―――――そうか。だが、俺はとてもとても反省しているんだ、だからナナ。」
「はい?」
「一晩かけてこの罪を償わせてくれるか?」
「………………。」
「ん?」
「………………いえ、それは……激しく結構です………。」
なんだか嫌な予感がして、軽く握られていた手を抜け出し、後ろに下がろうとした途端、強く掴まれて身動きがとれない。
「遠慮するなよ。明日は調整日だろう?」
その表情は、反省どころか獲物を捕まえて今から喰らおうとするような、獰猛な蒼い瞳だ。
「――――いえっ……本当に……っ……、どうぞ仕事、なさってください……!!もう十分、反省は伝わりましたので………!」
「――――こんなことは言いたくないがナナ、あの生殺しの夜から何日経ってると思っている?焦らすのもほどほどにしてくれないと、おちおち仕事も手につかない。」
エルヴィン団長は頬杖をついてわかりやすくはぁ、とため息をついて見せる。
「………っエルヴィン団長が、慣れてるから、いいって言ったじゃないですか……!」
「調整日前夜に続きを、とも言ったぞ?あれから何度調整日前夜に君を待っていても一向に来てくれないからだろう?自分で捕獲するしかないなと思った。」
「捕獲とか言うのやめてください。それに今執務中ですよ。団長。」
「どこまでが執務でどこからが違うんだ?今はコーヒーを飲んでる、休憩中だ。休憩も許さないのか?君は。」
「……………。」
どんなに冷たくあしらっても、どう毅然とした態度をとっても、どうやったって無理だ。この人に勝とうとするのが間違っていた………。