第60章 慕情 ※
「――――……リヴァイ兵長って、地下街出身、だよな……?」
「はい。―――――………サッシュ、さん……?」
なんだろう、サッシュさんがなにかにひどく怯えている。
「――――サッシュさん、質問の―――――……意図を……教えてもらえますか……?」
サッシュさんは片手で顔を覆うようにして俯き、掠れるように呟いた。
「………っ……なんでよりによって……っ………!」
「――――え………?」
「―――――いや、なんでもない………。」
サッシュさんは葛藤の末に何かを決断したような鋭い目をして、私に背を向けて足早に去っていった。
嫌な動悸がする。
何を思い詰めて、何をしようとしているのだろう。
「―――――エルヴィン団長。少しお話したいことが。」
「――――ん?」
「―――――壁外調査も迫っていてお忙しいのに……すみません……実は……。」
夜、団長室での執務中に一段落した様子のエルヴィン団長に声をかけ、昼間のサッシュさんの様子がおかしかったことを話した。
「―――――君は何か引っかかっていることがあるんだろう?」
「はい、様子が変だと思ったのは、サッシュさんが実家から帰って来てからです。ここからは想像ですが、今年から憲兵団に配属になった弟がいるとのことで………その弟と何かあったのかな、とは思っていたのですが……。」
「憲兵団……か………。」
「………マシューさんのこともあって……私が憲兵団に敏感になり過ぎているだけかも、しれませんが………。」
エルヴィン団長は少し考えて答えた。