第59章 伝播
「リヴァイ兵士長は―――――エルヴィン団長を、ハンジさんを、ミケさんを、本当に大切に思っているからです。………私も叱られたことがあります。その場の上辺だけを取り繕って、本当に仲間の事を考えた行動を選択しなかった時………、相手のために、どんなに耳が痛くても、自分が嫌な人間になろうとも、言わなきゃいけないことはあるんだって……教えてくれました。」
「―――――私たちの、ため……。」
「…………。」
「――――すごい人です。だからきっと―――――その行動には、意味があると信じられます。」
「―――――………そうか。」
ミケさんは柔らかく、でもどこか少し切なげに目を細めた。
ハンジさんは眉を下げてどこか困ったように、でも嬉しそうに微笑んでくれた。
「それはそうと、ナナが医学以外にもあんなに沢山のことを学んでいたなんて………本当に驚いたよ。ナナは、すごいね。」
ハンジさんのその手が私の頭を撫でた。隠し事をされていて、私に対してだって良い気はしなかっただろうに。
私はいつも、救われてばっかりだ。
「ナナ、しつこく聞くが、本当にいいのか?」
ミケさんが私を見下ろして問う。
私は薄く微笑んで答えた。
「――――ありがとうございます、ハンジさん、ミケさん。私は大丈夫です。」
「あ、来た!リヴァイ。」
「―――――悪い。」
その瞬間、ミケさんがすん、と鼻を鳴らした。
「――――リヴァイが来たなら、俺たちはもう行く。あとは頼んだ。」
「えっ、ちょ、なに、まだ私ナナに聞きたいこととか……!おいミケ!」
ハンジさんの訴えもむなしく、大きな身体のミケさんにハンジさんはずるずると引きずられて行ってしまった。
その姿を見送る私の肩に、リヴァイ兵士長が触れた。
「―――――とっとと終わらせるぞ。」
「はい………。」