第59章 伝播
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「遅いね、リヴァイ。」
「………はい………。」
少しの沈黙のあと、私は二人に尋ねた。
「―――――盗まれたふりをしようと言い出したのは、リヴァイ兵士長ですか……?」
「……うん、私たちは止めたんだけどね。エルヴィンに対して、思うところがあったのかな。」
「―――――確かに、独断と単独行動が多いからな、エルヴィンは。それでも信用させるところが奴の手腕だが――――――、リヴァイには通用しなかったんだろう。」
ミケさんが低く呟いた。
「――――確かに、そうなのかもしれません………。ただ私は――――――。」
「ん?」
言い淀む私にハンジさんとミケさんの視線が向く。
「リヴァイ兵士長があんな無茶な事をされた一番の理由は、ハンジさんとミケさんがエルヴィン団長に事実を伏せられていた事を知ったとき、悲しい顔をしたから――――――だと、思います………。」
「―――――………!」
「…………!」
「そして―――――エルヴィン団長の考えも正そうと……、何かを、身をもって感じて欲しくて……きっと………。」
「そう、だね………。確かに、そうかもしれない………。」
ハンジさんは目から鱗が落ちたとでもいうように、ハッとした顔で小さく言葉を漏らした。頭の中でその場面のリヴァイ兵士長の表情を、思い返しているのだろう。
「―――――……なぜナナはそう思う?そこまでリヴァイを信じられる?」
ミケさんが鼻をすん、と鳴らして私に問う。