第59章 伝播
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ナナが全て話し終えて、この書物を処分することに決まった。加えて、まだ話すべき事がある。
「――――――マシューのことだが、裏が取れた。」
「えっ、読み通り………だったの?本当に……?」
「―――――ああ、ザックレー総統だ。マシューは憲兵団からの転属で、本名までは聞けなかった。私と調査兵団を監視する目的で、そのまま置くとのことだ。」
ハンジはソファに寄りかかって、はぁ、とため息を零した。
「―――――身内からこうも腹を探られるってのは………嫌なもんだね………。」
「―――――リヴァイの話に、より信憑性が出て来るな。王政が兵団トップに圧力をかけたとなると――――――別部隊で危険因子排除に動いていても不思議じゃない。」
ミケも腕を組んだまま、ハンジの横で軽く目を細めて天を仰いだ。
「―――――とにかく、ナナを一人にしないようにしなきゃ。そしてアルミンだっけ?もう少し話を聞ける機会を作りたいね。」
「――――ああ、おいおい考えるとしよう。今急に動いて――――中央憲兵に目をつけられても困るしな。」
「………だね。」
ハンジが軽く伸びをした。
「さ、もうかなり遅いし………頭もいっぱいいっぱいだし。これ―――――処分して、お開きにしようか。」
「あっ、はい……!私が。」
それらを運び出そうとナナが立ち上がると、リヴァイが口を開いた。
「ハンジ、ミケ。ナナを連れて、兵舎の裏の焼却炉までそれを運べ。おれはエルヴィンに話がある。―――――すぐに、追いつく。」
「ああ、わかった。」
ナナがどこか不安そうにこちらを一度振り返って、ハンジとミケに連れられて部屋を出た。