第59章 伝播
「―――――随分とシケた面だな。」
「―――――随分荒っぽい――――――見え透いた茶番じゃないか。」
「―――――その言葉、そっくりてめぇに返してやるよ。」
リヴァイが私に近づき、嫌悪を顕にしてその鋭い視線を突き刺す。
「どうだったよ、身近な奴に手軽に出し抜こうとされた気分は。」
「―――――………。」
「お前がいつもやってきたことだ。ロイとの駆け引きも、今回のマシューのことも。ハンジやミケはお前を信じて赦してきた。お前はあの日、これから俺達に素直に甘えようと言ったが―――――その言葉自体信じるに値しねぇ。またダシ抜こうとされるのがオチだ。あいつらもそう思ってるだろうよ。」
「―――――………信用、ないな。」
「今頃気付いたのか?―――――だからお前にも味わわせてやったまでだ。少しでも感じたかよ、信じるべき相手が何を考えてんのかわからねぇ不安を。」
「ああ………なるほど。大変効果的だ。」
「―――――あいつらは言わねぇから俺が言ってやる。勘違いしたクソ野郎にな。」
「…………。」
「―――――てめぇは一人でこの兵団の兵士の命を背負ってんじゃねぇ。思い上がるな。」
「―――――………。」
「―――――俺達を欺くなら死ぬまで欺き通せ。それが出来ねぇなら――――――俺が毎回、力づくで吐かせてやる。」
リヴァイの眼は怒りに満ちていた。
ハンジやミケにあんな顔をさせた私をお前は否定しているのか。
全てを洗いざらい打ち明けることはできない。―――――だが、リヴァイの言うことももっともだ。
外の世界のことも、彼らなら共に考え、進んで行けるはずだったのにそれを躊躇したのは、危険に晒したくないという建前と――――――――
「ふふ………。」
「何が可笑しい。」
「ナナにも言われたよ。『エルヴィン団長は、誰のことも信じていないのですね。』とね。」
「―――――ナナのことも信じてねぇのか。」
「―――――ああ、そうだな。そうだったのかもしれない。彼女を、試すような事をした。―――――とても、悲しい顔をしていたよ。」