第59章 伝播
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「――――――馬の紋章、憲兵団……いや、中央憲兵か。」
「だろうな。中央憲兵が何か嗅ぎまわってる。――――――壁が破られて人類は危機に瀕している中で、王政の豚どもが、巨人に並んで恐れるのはなんだ?」
リヴァイ兵士長の問いに、エルヴィン団長が小さく答えた。
「―――――反勢力になりうる力と、それを持ち上げる市民の希望――――――……。」
「―――――そうだ、巨人に関してはあいつらの方が俺達より情報を持っているとしたら、むしろこの国を統治できなくなる事の方がよっぽど怖ぇだろうよ。だとすりゃあ――――――、お前は奴らにとって非常に扱い辛い脅威でしかない。エルヴィン。」
「――――――………。」
リヴァイ兵士長の言葉に、ザックレー総統の言葉が重なって重みが増す。おそらくそれを、エルヴィン団長も感じただろう。
「それともう一つがお前だ、ナナ。」
「―――――私………?」
リヴァイ兵士長の鋭い目が向けられ、反射的に背筋が伸びる。
「こんな時に民衆に“外の世界”なんて希望が知れ渡ったらどうなる?それを求め、それを与えてくれるであろう――――――有能な指揮官が率いる調査兵団を担ぎ始める。それだけは避けたいはずだ。」
「――――――だから以前にも増して、危険因子の排除に血眼になってるってわけ………?そして………ナナがその危険因子になり得る理由が、この書物なんだね………?」