第59章 伝播
「なにやら激しく物音がしてた。物色してたんだろうな。目当ての物がなかったのか、周りに聞き込みを始めやがって――――――、あぁ、俺は何も話してねぇぞ?だがな、あのあたりに転がってる爺さんが金欲しさに喋ってたよ。随分前だが、白い髪の美しい少女があの家に、定期的に来てたこと。」
「――――――………!!」
「そして――――その少女を、地下街で最も粗暴で恐ろしい男が、守ってたってな。」
「…………。」
「なんか、やべぇんじゃねぇのか。あの綺麗な女、あれを守るためにあんたは地上に出たんだろう?」
「―――――………。」
あの頃のことが、頭に蘇ってくる。
男は俺をまっすぐに見て言った。
その言葉が、ワーナーが残したそれと重なる。
「あんたは守るんだろ、最後まで。だから俺は教えに来てやったんだ。」
「―――――……てめぇにゃ関係ねぇだろう。」
「はは、まぁそうだ。」
俺はその男のポケットに、さらに銀貨を差し込んだ。
「―――――恩に着る。」
「マジかよ!!」
「お前の観察力と推察力は信頼に足ると判断した。報酬に見合う情報だった。」
「―――――まぁ、あんたのこと、見てたからな。」
「………あ?なんだ、気持ち悪ぃ告白すんじゃねえよ。」
「―――――あの全身がナイフみたいに尖ってたあんたも悪くなかったけどな。………守るものを見つけて地上に出たあんたは、なんつーか……地下に生きる俺の、憧れみたいなもんだ。なにかあったら呼べよ。おれはジルだ。」
男は少し気まずそうに目線を逸らしつつも、最後はニッと笑って手を差し出して来た。
その手を握り返す。
「―――――ジル。引き続き情報を持って来い。買ってやる。」
「了解だ。」