第59章 伝播
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「―――――俺に会いたい奴が来てる………?」
門番から俺に連絡があった。
どうせ人類最強の兵士に会いたいだの、冷やかしめいたものだろう、めんどくせぇ。睨み付けてやればすぐ逃げ出すだろう、そう思いながら門前へ向かうと、そこには見覚えのある男がいた。
「―――――お前………。」
「―――――よぉ、覚えてるか?相変わらず目つきが悪ぃな。」
にたりと笑うそいつは、ナナを連れてワーナーの家に行った時に絡んで来たあいつだ。地下街にいた頃から、そう濃くはないものの二度や三度は話したことはある。
「―――――こんなところまで、何の用だ。」
「いや、王都で待ってたんだけどよ。最近あんまり来ねぇじゃねぇか。あのぶったまげるぐらい綺麗な女に捨てられたのか?」
下衆な笑いに、若干の殺意を混ぜた目線を送る。
「―――――殺されてぇのか?要件はなんだ。」
「………やめろよ、こっちは親切心で来てやったんだ。あんたがらしくもなく、あの女を大事にしてそうだったからよ。――――随分と、ガキの頃から。」
「………あ?」
ナナにまつわる話であるというだけで、聞かずにはいられなかった。
「―――――おっと、ここから先は有料だ。」
「………ちっ………いくら欲しい。」
「銀貨5枚で手を打つぜ?」
その男に言われるままに金を渡した。俺の向ける殺意にも動じない肝の座り方。昔から見ていたものと現状の情報を合わせて、俺とナナの関係性を察しネタに出来ると踏んだ観察力。こいつはそこそこキレる奴だと、そう思った。
「―――――相応の情報じゃなければ、どうなるか分かってんだろうな?」
「はは、怖えぇな。まぁ聞けよ。」
男はそれから事細かにこれまでのことを話し出した。
「あんたらが地下街に来てから2ヶ月後、くらいか。馬の紋章を背負ったおっかねぇ面の奴らが、お前らが入ってった家に、同じように入っていってな。」
「―――――………。」