第59章 伝播
「――――――あぁそう言えば不思議に思ったんだ。know も kiss も、同じKから始まるのに口に出す音がまるで違う。それがややこしいな。」
「―――――そうですね、他にもありますよ。表記されていても発音しない場合が――――――。」
言いかけた瞬間、私の頭の隅で過去の言葉が思い返されて連なった。
『文字に書いてみれば間違わなかったかもしれないのにな。声に出すと色んな意味が違ってきちゃうね。』
『――――――あぁそう言えば不思議に思ったんだ。know も kiss も、同じKから始まるのに口に出す音がまるで違う。それがややこしいな。』
「―――――――!!!!!」
そうか、そうだ、きっと――――――。
私はガバッと身体を起こした。
「ナナ?どうした?」
「エルヴィン……団長、早く、早く帰りましょう!!!見つけた、気がするんです……!」
私があまりに興奮して早く帰ろうと急かしたから、エルヴィン団長も折れてくれてその後すぐに帰路についた。
夕方に兵舎に戻って馬を繋ぎ団長室へ向かうと、部屋の前に神妙な面持ちでリヴァイさん、ハンジさん、ミケさんがたたずんでいた。
「あれ、みなさんどうかされ――――――――……えっっ………!!!」
私は目を疑った。あの小さな事件の日と同じ―――――――いや、もっと乱暴にこじ開けられた団長室の扉が、ギィ、と傾いていた。