第59章 伝播
「―――――君とこうしていると、心が安らぐ。」
小さく呟いたその言葉は、団長としてではなかった。
「―――――……エルヴィン………。」
大きな身体でまるで子供のように私に抱きつく姿にほだされて、その名を呼んで頭を撫でると、エルヴィンはその蒼い目を私に向けて、甘えるように呟いた。
「―――――Kiss me.」
「!!」
「――――おや、発音が違ったか?」
「――――いえ、合ってます……。あれだけ多忙なのに……先日のことといい………もうそんなに覚えているんですか……?」
「楽しくてね。しかも君を口説くのに一番効果的だと思った。」
「…………。」
なんて心をくすぐることを言うのだろう。
この人は、“少年”と“大人”を使い分けるのがうますぎる。
「してくれないのか?」
「――――――Sure….」
ねだってくる蒼に完敗して、ご褒美を与えるように小さく口づけるとエルヴィンは満足したように私の胸に顔を埋めた。