第3章 家族の絆ー後編ー
時代が変わっても変わらないもの。
その中の一つに“家族の絆”が含まれている。
ずっと昔に一度壊れてしまったけれど、一人の女性の命と引き換えに取り戻した絆。
時を超えてもなお、その絆は強く繋がっている。
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ピクニックも終わり家に着くと、槇寿郎が家の玄関の扉を開けて中に入る。
瑠火、杏寿郎も槇寿郎に続いて中へと入る。
千寿郎は玄関の前で振り向いて、「姉上、お帰りなさい!」と大きな声で言った。
千寿郎の行動に思わず目を見開くが、クスクスと笑って頭をポンポンと撫でた。
「ただいま、千寿郎」
桜の行動に今度は千寿郎が目を見開く番だった。
“帰ってきたら頭を撫でて「ただいま」と言ってほしいです。約束です!”
ずっと昔、姉上が任務へと赴く前に交わした約束。そしてそれが叶うことはなかった。
その約束を今世で姉上とした覚えはない。
「姉上、もしかして……」
千寿郎の呟きに桜はニコッと笑って、千寿郎の手を引き家の中へと入っていく。
千寿郎の目からは涙が溢れていた。
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事故に遭遇する前に見た悪夢の内容は覚えていない。
自分の中にあるのは、幼少の頃から鬼殺隊で命を落とすまでの記憶だけだ。
けれどそれで良い。
あの頃の自分達があって今があるのだ。後悔はしていない。
そして今度こそ、私たち“家族の絆”が壊れることはないだろう。
巡り巡って、深い絆で結ばれているのだから。
ーーENDーー