• テキストサイズ

鬼滅の刃〜炎の絆〜

第3章 家族の絆ー後編ー


「…家に帰らないのですか?」

桜が今いる場所は、綺麗な花がたくさん咲いている見晴らしの良い丘の上だった。

樹齢100年以上の大きな桜の木が一本、丘の真ん中にあり、その下に瑠火は敷物を敷き、男性たちが重箱を持ってきてそれを広げていく。

「今日は天気も良くて暖かいからな。ピクニックがしたいと俺と千寿郎で母上に言ったんだ!」

嬉しそうに話す杏寿郎を見て、杏寿郎らしいなぁとクスクスと笑ってしまった。

桜たちがまだ小学生だった頃は、毎年のようにこの丘で花見をした。

大きくなるにつれてピクニックをすること自体少なくなってしまったので、今日は本当に久しぶりに家族揃ってのピクニックなのだ。

杏寿郎だけでなく、千寿郎も嬉しそうだ。

桜の季節ではなく、紅葉というには少し早すぎる時期ではあるが、それでも見晴らしの良いこの丘は日当たりが良くていつでも楽しめる。

そしてこの場所は“昔”からのお気に入りの場所でもあった。

丘の上から景色を眺めていると、隣に杏寿郎がやってくる。

「…懐かしいな。君は昔よくこの場所で昼寝をしていた」

杏寿郎の言う“昔”は前世のことだとすぐに分かった。母上の墓参りの後や、訓練の後によくここに来ては、寝転んで花を眺めているうちに寝てしまっていたのだから。

「今も昔も変わらないね、ここは」
「そうだな。時代が変わっても変わらないものは沢山ある」

お互い顔を見合わせて笑っていると、千寿郎の「兄上ー、姉上ー!」と呼ぶ声が聞こえてくる。

「母上が朝早くから作ってくれたんだ、みんなで食べよう!」



グーーーーー



「…………………」
「…………………」

杏寿郎の言葉に返事を返そうとした矢先の出来事だった。

まさかお腹で返事をする羽目になるとは思いもよらず、桜は顔を真っ赤にして両手で顔を隠した。

「ははははははは!桜の腹は正直だな!」
「…ううっ、恥ずかしい」

お腹の音を聞かれたのが杏寿郎で良かった。これが実弥くんだったら恥ずかしくて死んでしまう、などと考えながら、杏寿郎と一緒に槇寿郎や瑠火、千寿郎のいるところまで行った。




「改めて姉上、退院おめでとうございます!」

笑顔で話しかけてくれる千寿郎の顔は本当に嬉しそうで、桜も思わず微笑んで「ありがとう」と伝えた。


/ 104ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp