第3章 家族の絆ー後編ー
那田蜘蛛山事件から早数ヶ月。炭治郎たちは機能回復訓練に勤しんでいた。
途中、善逸と伊之助はグレて参加していなかったが、炭治郎がどんどん成長していくので焦りを感じたのか訓練を再開したのだ。
「うん、短期間で全集中常中ができるようになったね」
えらいえらい、と三人の頭を撫でてあげると、炭治郎と善逸は照れて伊之助はホワホワと喜んでいた。
「でも全然桜さんの速さには追いつけません」
「頑張れー!」
手をグーにして片手を上げながら応援する桜。棒読みのため、心がこもってないとすぐに分かる。
「応援する気ある?!ねえ桜さん!応援する気あるぅぅう?!」
無いよね!絶対に無いよね?!と汚い高音で叫ぶ善逸の背後に、しのぶがそっと近づいた。
「桜は柱の中で一番足が速いですからね。追いつけなくても仕方ないです」
「ぎぃぃぁぁぁああ?!」
急に話しかけられたので善逸は驚きのあまり飛び跳ねた。そんな善逸を見てしのぶはあらあら…と終始笑顔だ。
しのぶの言葉に、そう言えば那田蜘蛛山に入る前にも他の隊士がそんなこと言っていたな…と思い出す。
音で何となく強いことは分かっていたが、戦っているところを直接見たわけではないので柱だとは言われるまで気付かなかった。
「善逸はいいところまで行くけどね」
三人の中で一番足が速いし、と付け足すが、それでも明らかに手加減されているのでまだまだだ。
「そういえばしのぶ、何か用事?」
「あ、そうでした。炭治郎くん、診察したいので少し宜しいですか?」
「あ、はい」
しのぶと炭治郎は訓練場を後にしたので、今日の訓練はここまでとなった。
「おい煉子!俺ともう一度勝負だ!!」
「はいはい、じゃあ私を捕まえてねー」
そう言ってその場から消えた。
「消えた!?また消えたよ?!」
「ふはははははは!俺の感覚でお前を絶対に見つけてやるぜ!!」
そう言って伊之助は感覚を研ぎ澄ませ集中する。
「あっちか!!」
「猪突、猛進!!」と叫びながら桜のいるであろう場所へと走っていった。
残された善逸は「何なんだよ、皆していなくなって!酷くない?!」と一人寂しく庭の方へと行き、休憩することにしたのだった。