第1章 家族の絆ー前編ー
生家を出たあの日から、二年以上の月日が流れた。
あの出来事の後、桜は胡蝶カナエの元へと訪れていた。出会って早々図々しいかなと思ったが、頼れる人がいなかったため、仕方がないと自分に言い聞かせたのだ。
そんな桜を、カナエは嫌な顔一つせずに快く受け入れてくれた。妹のしのぶとも知り合い、仲良くなった。
夜は鬼を狩り、昼間は訓練に勤しむ。そしてしのぶの影響もあり、一緒に薬学の勉強もした。しのぶは鬼の首を斬ることはできないが、かわりに毒で鬼を殺す。
桜は鬼の首を斬ることは出来るが、小柄で他の女隊士と比べると力は弱い方だ。なので、いざと言うときは毒を使用することもあるのだ。
光の呼吸については、壱の型以外にもいくつか技を編み出すことができた。おかげで鬼を倒しやすくなり、同時に光の呼吸はやはり自分に合っていると認識した。
これも一重に、胡蝶姉妹のおかげと言える。二人がいなかったら、短期間で此処まで成長することはできなかっただろう。
カナエは柱になり、桜たち以上に忙しい日々を送っていた。そしてある日、栗花落カナヲと言う可愛い女の子を拾ってきた。カナエは、私を含め人を拾うのが好きなのだろうか…と思った瞬間だった。
でも、その優しさに救われたのも事実。カナヲもたくさんの優しさに触れて少しずつ心を開いてくれたら良いなと、そう思う。
天然なカナエと意思疎通が出来ないカナヲ二人にしのぶがキレて怒る。そしてそんな三人を見て「平和だなぁ」と笑いながら過ごした。
杏寿郎や千寿郎と一緒に過ごした日々も楽しかったけれど、カナエやしのぶ、カナヲと過ごす日々も楽しい。
悲しいことや辛いこともあるが、そんな時はお互いに相談し合う。勿論楽しいことや嬉しかったことも忘れずに報告する。
“こんな日がずっと続けば良いのに”
誰もがそう願っていた。
けれど鬼がいるこの世界はとても残酷で
鬼殺隊に属している私たちは
明日命があるかも分からない身なのだ。
そんな幸せな日々が続くことは決してないと
改めて思い知ることになる……。