第4章 ご都合血気術
あれから二人で朝餉の準備をした後、家族みんなで食べて、後片付けの手伝いも終わった桜は庭の方へと足を運んだ。
そこには、木刀…ではなく、日輪刀を持って技を磨いている杏寿郎の姿があった。
大きな柱に手を添えて、邪魔にならないよう静かに眺める。
杏寿郎は閉じた瞳をカッと開き、そして技を出した。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」
刀から、まるで炎が出ているかのような綺麗な技が決まる。
そんな杏寿郎の姿を見て、桜は目をキラキラさせた。
「すごい…!」
「む?桜か!」
「杏寿郎お兄ちゃん、すごい!」
とてて、と杏寿郎の元へと駆け寄り、「もう一回見たい!」と嬉しそうに言う桜に、杏寿郎は頬を染めて照れる。
そして少し離れるよう伝え、桜のお願いを聞いた杏寿郎は、技を繰り出していった。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!弐ノ型 昇り炎天!参ノ型 気炎万丈!!」
次々と出される技に桜は「すごいすごい!」と興奮する。
「まるで魔法みたい!」
「魔法?」
うんっ、と笑顔で頷く桜。
「私もできるかなぁ?」
「うむ、きっと出来るぞ!桜も炎の呼吸だったからな!!」
「うん??」
杏寿郎の言葉の意味はいまいち理解していないが、それでも“できる”と言われたことに嬉しくなる。
桜は刀を持つふりをして、杏寿郎がしていた動きを真似してみた。
「ほのおのこきゅう、いちのかたっ、しらない!!」
「ん"ん"?!」
「ふふっ、違いますよ桜さん。“しらない”ではなくて“しらぬい”です」
どう反応して良いのか分からない杏寿郎と、クスクス笑いながら間違いを教えてあげる千寿郎。
訓練や呼吸を教えたりするのは杏寿郎の方が上だが、子供の扱い方は千寿郎の方が上のようだ。
頭を撫でながら「次は上手にできますよ」と言うと、桜は目をキラキラさせて「うん、頑張る!」と言って、杏寿郎に色々と教えてもらった。
勿論千寿郎に「兄上、やり過ぎないで下さいね」と釘をさされながら。