第5章 春はやっぱり桜だね
「エニシ〜!ごはんよ〜!って、あら。今日は早いわね。」
結局眠れなかった私は、兄ちゃんが起きるのとほぼ同時に起きて、早々に支度した。
その結果、いつもはまだ夢の中にいる時間には席について朝ごはんを待っていたのだ。
その結果、
「明日は、雪でも降りそうだな。」
「本当ね。どうしちゃったの?」
「また頭でも打ったのか?」
父、母、兄が口々に失礼な事を言い出す始末。
「…私だって偶にはこういう日くらいあるよ。」
何なんだよ、みんなして。こんちくしょー。
私が憮然としてると、料理が目の前にことん、と置かれた。
今日はおにぎり、ベーコン、目玉焼きのワンプレート。スープは味噌汁だ。定番だね。
「いただきます。」
私の前に座った兄ちゃんが手を合わせて静かに食べ始めた。
私はご飯を食べながら、ちらちらと兄ちゃんを盗み見る。
今、こうして普通に生活している兄ちゃんが、近い将来死んでしまうなんて全く想像できない。結びつかない。
夢の事言った方がいいのかな、とは思うけど、何となく言えなかった。
「…何だよ、さっきから。」
怪訝な顔して見る兄ちゃんに、私は一生懸命笑いながら首を横に振る。
「ううん、何でもない。」
言ったら本当にそうなっちゃうような気がして怖かった。
暫くこの事は考えるのよそう。
もうちょっと色々考えてからにしよう。