第19章 お別れと始まり
笑い合う人々が行き交う大通り。
誰も彼もが暢気そうに見えて、自分の境遇が気に入らなくて、訳もなくムカっ腹が立って仕方なかった。
私は人の笑い声を避ける様に、閑散とした道を選んでいく。
奥に行けば行くほど浮浪者が屯するように座り込んでいて、その誰もが鬱々とした顔をしていた。
だけど、こちらの方が落ち着く気がする。
自分だけじゃないって思えて安心するのかも。
…案外、私は嫌な奴だったんだね。
気の向くまま、ふらりふらりと道を進んでいく。
色々な曲がり角を曲がったせいで、今自分が何処にいるのかも分かっていない。
陰気な空気とひそひそ声が、より一層場を陰鬱とさせる。
その時、一軒の家屋からがやがやとした声を押しのけるように声が響く。
「くっそ〜!また負けた!」
「だから、もう止めましょうって。綱手様。」
ふと、聞こえた名前に驚いた。
綱手様、って…。あの綱手様…?
私は、慌てて格子付き窓から中を覗いて声の主を探す。
「何言ってんだ!金借りてもう一回行くぞ!」
「何処から借りようって言うんですか〜!」
「うるさい!いいから黙って着いて来い!」
「あひぃ〜!」
うそ…。こんな所で会えるなんて…。
綱手様は、お連れの人の手を引っ張りながら外へと出ていく。
私はというと、裏側にいたもんだから急いで表側へと回り込む。
けど、そこに綱手様の姿はなくて玄関にもいないみたい。
「待ってくださいよ〜。」
さっきの人!
私は声を頼りに、もつれそうになりながらも必死で後を追いかけた。
綱手様に就けば、今の能力は劇的に飛躍する。
イタチにだって肩を並べられるかもしれない。
こんな偶然、兄ちゃんのお導きとしか思えない。
だったらもう一度、ここから始める。
兄ちゃんの願いを叶える為に。
イタチに追いつく為に。
「お願いがあります!!」
何が何でも喰らいついてやる!!