第18章 記憶喪失に…なりました?
「あの、じゃあ…里転覆の容疑って…。」
「それは今知った。」
「うん、あの…。それでいいの?」
あっけらかんすぎて…どうなのよ?
言える立場じゃないけど、そんなこと聞いてよく平然としてられるな、って思う。
「俺はな、人を見る目にはちいとばかし自信があるんだよ。」
店長はそう言って、にっと笑う。
「お前さんに里転覆は合わない。もし本当にやろうとしてたんなら、それはきっと誰かを守ろうとした結果じゃないか?お前さんは真っ当な人間だよ。」
「店長…。」
泣きそう…。
少しの付き合いなのに、こんなにも自分という人間を受け入れてもらえるなんて…。
「ま、元気出せよ。あ、そうだ。今夜働きに来るか?どうせ予定がなくなって暇だろ?」
そうね…。
家でじっとしてても仕方ないし。
「行きます。働いて稼いでやる。」
稼いで貯金して、いつかこの里を出ていくわ。
こんな所でよく分からない容疑で閉じ込められて、一生を終えてたまるもんですか。
「お、元気が出て来たな。そうそう、こういう時は体を動かした方が頭がスッキリするもんだ。」
「店長の場合は単に人手がほしいだけでしょ?」
「…バレちまったか。」
「バレバレですー。」
私達は笑い合いながら店へ向かった。