第18章 記憶喪失に…なりました?
「ふあぁ〜…。」
昨日忙しくて…。
夜が終わった後、明日の仕込みを手伝ってたから帰ってきたのが日付を跨ぐところだったんだわ。
もう、お風呂に入る気力もなくて速攻でばたんきゅ〜だった。
いつ寝たのかも記憶にない。
ナルトに引っ張られるように、がやがやと賑やかな人並みをずんずんと進んでいく。
で、街唯一のケーキ屋さんへとやって来た。
カランカラン…
ドアベルの鳴るドアを開けると一気に甘い匂いに包まれる。
クリームとスポンジとフルーツと…色々な甘い匂いが程よく混じっていて、思わずお腹が鳴りそうになった。
ショーケースに並んでるホールケーキはどれもこれもカラフルで可愛くて美味しそう。
「でも、誕生日ケーキと言ったら…。」
やっぱりショートケーキでしょ。
「これください。」
指を指したのは一番小さなホールケーキ。
「こちらですね。贈り物ですか?お持ち帰りですか?」
「持ち帰りで。誕生日ケーキなんです。」
「では、こちらのチョコレートプレートをお付けしますね。」
それは”おめでとう”とホワイトチョコで書かれたミルクチョコ。
「三百両になります。」
チャリチャリーン…
「ありがとうございました。」
店員さんからケーキの箱を受け取ると、後ろに隠れていたナルトが顔を出す。そして、目を輝かせながらケーキを受け取った。
ちらっと店員さんを見ると、笑顔が少し引き攣っているみたいだった。
…ふーん、ナルトの言った通りだったとはね。
こんな子どもを意味もなく嫌って避けるとか。大人気ないったら…。
私はナルトの手を引くと、トラブる前にさっと外へ出る。
カランカラン、とベルの音を後ろで聞きながら、私達はハイタッチした。