第1章 花の寿命は短いもの
…うん。
何だか混乱してきた。
私の名前は藤崎由紀だった筈。
お父さんが三島由紀夫が好きで、そこから名前をつけたらしい。
女の子なのに男の人の名前からとるってどうよ?って複雑に思った覚えがある。
でも、これは私の名前であって私の名前ではない。
つまり、だ。
エニシなんて名前に覚えがないと思ってたけど、よくよく考えたら私の名前だわ、って分かる。
フルネームは、うちはエニシ。
お兄ちゃんの名前は、うちはシスイ。
私の歳は六歳。
ぴっかぴかのアカデミー1年生だ。
…うん。
まんま、NARUTOの世界だわ。
そして、ここは確か裏山のお兄ちゃんの修行場所ではなかろうか。
今日は、半ば無理を言って、お兄ちゃんと修行をしたいと駄々をこねて着いて来た。
イタチが来ると知っていたからだ。
で、木登りの途中に足を滑らせて落下。結果、頭を強打…。
状況はなんとなく飲み込めてきた。
けど、最後の悪あがきをしておきたい。
「…ねぇ。ここ裏山の修行場所だよね?」
お前、やっぱり診てもらった方が、と言いながらお兄ちゃんが立ち上がるのを、服の裾を掴んで止めた。
「大丈夫。”全部思い出した”から。」
そう。
私は、前世の記憶を全て思い出した。
「…ねぇ。あなたは”うちはイタチ”だよね?」
「…そうだな。さっきも名乗った筈だが?」
イタチは心配そうな眼差しを私に向けた。
やっぱりか、と私は項垂れるしかなかった。
折角生き返ったのに、死亡フラグが既に立ってるってどういうことぉぉ!!?