第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
クーデターなぞ、木の葉で簡単に成功など出来る筈がない。
いくらうちは一族でも里を相手取るなど不可能なのだ。
引けは取らないだろうが、被害が甚大となる事は容易に想像できる。
一族が望むように里の情報を流すつもりも毛頭ない。
その時点で、クーデターは瓦解していると言える。
事細かな情報と一瞬の好機を図る必要のあるクーデターはイタチが最も頼みの綱となるからだ。
それをイタチ自身もよくよく理解していた。
それが失敗すれば、里に明るみとなり、うちはは罪を免れない。
一族は根こそぎ投獄されるのだろう。
おそらく、自分の密告によって。
そして、最悪の場合は死罪もあり得る。
―それでも…。
里の安寧と一族の矜持を天秤にかけた時、イタチは迷いなく前者をとる。
木の葉の里があってのうちは一族なのだ。
うちはの矜持を貫くために里が潰れる事は、決してあってはならない。
イタチは迷いなくそう考えていた。
サスケだけが残るのであれば、おそらくは自分がサスケだけは嫌疑を免れる様に仕組んだのだろう。
一族の中で、サスケが最年少。
彼以外は全て里に何らかの形で従事している。
であるならば、それを理由にサスケだけは逃す事が出来るのだ。
自分の取りそうな選択だと思った。
―聞き出して正解だったな…。
僅かとはいえ彼女がその物語に目を通していてくれたのは僥倖だったとイタチは思う。
エニシが見たそれは、自分達からすればある意味では預言書である。
情報はないよりある方がいい。
やがて来るだろうその未来にも対処できるからだ。
何より、イタチは一人ではない。
頼もしい友がいる。
“私は…、そうなる前に止めたい。イタチだけに傷を背負ってほしくない。”
案じてくれる人がいる。
“俺達も追いつくからな、暗部入り。エニシと一緒にお前を支える。”
支えてくれる人がいる。
こんなに嬉しい事はない。
こんなに心強い事はない。
シスイ兄妹は、イタチにとってかけがえのない存在なのだ。