第3章 私が今、出来る事
「起立、気を付け、礼。」
「「「ありがとうございました。」」」
数日後、私はアカデミーが終わってから、また繁華街へと赴いた。
クシナさんに会いたいと思ったから。
また、橋の所で街を眺める。
忙しそうに歩く人がいたり。
家族連れで楽しそうに歩いて行く人がいたり。
つまんなそうに周りを眺めながら歩く人がいたり。
眺めているうちに、特徴的な赤い髪が見えた。
クシナさんだ。
向こうも私に気づいたみたい。
試しに手を振ってみると、振り返してくれた。
「また手伝うよ。」
私がにっと笑うと、クシナさんは嬉しそうに笑った。
「お願いするってばね。」
また、帰り道をてくてく歩く。
今日はアカデミーの事をいっぱい話した。
気に入らないトウキの話や、苦手な算数の話。
クシナさんも算数関係は苦手みたい。
すっごく話が合った。
「ありがとう。家ここなの。」
クシナさんが一軒家の前で止まる。
「よかったら寄ってく?」
嬉しいお誘いだが、誰の目があるとも分からないから、深入りは出来ない。
私は首を横に振る。
「折角だけど、遠慮する。」
「どうして?」
クシナさんが不思議そうに首を傾げた。
どうして、と言われてもなぁ。
自分で言うのは気が引けるけど、理由はこれしかない。
「私は”うちは”だから。」
うちはじゃなかったら、普通に話せたのかな。
なんて、思ってみたりして。
けど、うちはに生まれたからには、私だってうちはの誇りは持ち合わせてる。
私は顔を上げ、しゃんと背筋を伸ばすと、にっと笑った。
「またね!」
クシナさんは複雑そうな顔をしながらも、私に合わせて笑った。
「うん、またね。」
私はそれを聞いて手を振りながら踵を返した。